[Python][postgresql]multicornを使ってPythonでfdwを実装する
今の会社に入ってからPostgreSQLを使い始めました。というわけで、初心者ですが PostgreSQL アドベントカレンダー 2011 に参加してみます。
さて、PostgreSQL 9.1からSQL/MED規格の一部である 外部データラッパ (FDW:Foreign Data Wrapper) がサポートされました。すでに PostgreSQL アドベントカレンダー 12月3日分にて、板垣さんが WebAPIをfdwから叩いてます。 この記事では www_fdw という既存のfdwを利用する方法でしたが、今回は実際に自分でfdwを作ってみます。
fdwはAPIを6個程度書くだけで良いのでそれだけでもかなり書きやすいのですが、いかんせんCで書く必要があります。そこで、 multicorn を使ってpythonでfdwを書いてみました。
なにを題材に書こうかなと思ったのですが、Pure Pythonで作られた全文検索エンジンの Whoosh を使ってみました。
ソースコードは、 こちら に置いてあります。
準備
まず、以下の二つをインストールする必要があります。
- whoosh
- multicorn
下にubuntuで叩いたコマンドを書いておきます。
% sudo atp-get install postgresql-9.1 # postgresql-9.1を入れる
% sudo apt-get install python-dev # multicornのcompileにヘッダが必要
% sudo apt-get install python-pip # pythonのパッケージ管理ツールpipを入れる
% sudo pip install pgxnclient # pgxnを扱うためのクライアント
% sudo pip install whoosh # 全文検索エンジン
% sudo pip install -e "hg+http://bitbucket.org/r_rudi/whooshfdw#egg=whooshfdw" # 今回実装したパッケージをbitbucketからインストールする
% sudo pgxn install multicorn --testing # multicornを入れる
なお、今回はPostgreSQLサーバがpythonを叩くため、パッケージはvirtualenv環境ではなく、システム自体にインストールしてください。
whoosh index作成
全文検索するためにはまずインデックスを作成する必要があります。
registerというクラスを用意しておきましたのでそれを使います。
今回は、wikipediaの全ページのタイトルだけが含まれたファイルを検索してみます。
http://dumps.wikimedia.org/jawiki/20111203/ から jawiki-20111203-all-titles-in-ns0.gz をダウンロードし、/tmpに展開しておいてください。
from whooshfdw import register
register.register(file='/tmp/jawiki-20111203-all-titles-in-ns0', indexdir='/tmp/indexdir')
手元のマシンではだいたい40分ほどかかりました。お試しの場合はhead -n 1000とかしてください。
なお、インデックスですが決め打ちで2-gramで作成してあります。このあたりはコードを読んでくださいね。
SQL
準備が整ったところでいよいよfdwです。まずは Server と Tableを作成します。
CREATE EXTENSION multicorn; -- multicornをDBにいれる
CREATE SERVER whoosh_srv FOREIGN DATA WRAPPER multicorn options (
wrapper 'whooshfdw.whooshfdw.WhooshFDW' -- Server作成
);
CREATE FOREIGN TABLE whooshtable( -- FOREIGN TABLE作成
id numeric,
title character varying
) server whoosh_srv options (
indexdir '/tmp/indexdir' -- インデックスの場所をオプションで指定
);
できたところで SELECT 実行です。
% psql -c "SELECT * from whooshtable where title LIKE '%どこでも%';"
id | title
----+--------------------
1 | どこでもまど
2 | どこでもドア
3 | どこでもパス
4 | どこでも大砲
5 | どこでもCHU
6 | どこでもドアー
7 | どこでもいっしょ
8 | どこでもチョコボ
9 | どこでもWiiの間
10 | どこでもドラえもん
(10 rows)
ちゃんと返ってきてますね。
実装の解説
multicornを使ったfdwの実装は ForeignDataWrapper クラスを継承したクラスを作成し、コンストラクタである __init__ と実行メソッドである execute を実装するだけです。
__init__ではsuperを呼び出すだけです。また、実際の検索を行うexecuteの中では yield を使って値を次々に返して行くだけです。
下はfdwの機能に絞ったコードの抜粋です。(全部はbitbucketを見てください)
class WhooshFDW(ForeignDataWrapper):
def __init__(self, options, columns):
super(WhooshFDW, self).__init__(options, columns)
self.columns = columns
self.indexdir = options["indexdir"] # CREATE TABLE で指定したオプションを持ってくる
def execute(self, quals, columns):
for query in quals: # qualsはWHERE句の中身が入っている
q = parser.parse(query.value)
with ix.searcher() as searcher:
count = 1
for r in searcher.search(q):
res = {'id': count, 'title': r["title"].encode('utf-8')}
yield res # 値を辞書形式で返してあげる
count += 1
まとめると、
- __ini__の中でsuperを呼ぶ
- executeの中でyieldを使って値を次々に返せるようにする
これだけ。
注意点
なお、qualsというのはWHERE句の中身です。そしてwhere句は*必ず*適用されます。例えば、
def execute(self, quals, columns):
for i in range(1,20):
yield(i, "hoge")
としておいて、
SELECT * FROM whooshtable WHERE id = 10;
というSQLを実行した場合、「executeでqualはなにも使ってないんだから1から20まで表示されるだろう」と思いますよね。でもそうではなく、ここでは 10,hoge しか出てきません。
速度は?
実用を求めるならCで書けよな、と思いますが一応。
|*本体 |Mac Mini (mid 2011)| |*OS|Ubuntu on Virtualbox| |*CPU|2.4GHz(Core 2 Duo)| |*メモリ| 8G| |*postgres| 9.1|
PostgreSQLの設定はubuntuのそのまんまです。っていうか、VirtualBoxという時点で評価の意味がないような気がしますが…。
1247130行のwikipediaのタイトルだけを抜き出したものでindexを作成するのに
% time python register.py
2571.88s user 289.96s system 91% cpu 51:54.10 total
2571秒はだいたい42分。これをfdw経由で検索すると、
Foreign Scan on whooshtable (cost=10.00..15.00 rows=9999999 width=64) (actual time=619.132..620.073 rows=10 loops=1)
Filter: ((title)::text ~~ '%どこでも%'::text)
Foreign multicorn: multicorn
Foreign multicorn cost: 10
Total runtime: 681.000 ms
でした。ちなみに普通にpythonで検索してみました。timeitを使って、100回実行して平均を出してみると、
% python search.py
15.917749 msec
おやまあ、やっぱりPostgreSQLからpythonを呼び出すコストが結構かかるようですね。pypyでも試してみたくなりますが止めておきます。
まとめ
今回は PostgreSQL 9.1から搭載されたfdwをPythonで実装できるmulticornを使って、pure pythonの全文検索エンジンwhooshをSQLから叩けるようにしてみました。
…字で書くとなんかむちゃくちゃですね。でも、やったことは非常に少しなのでPostgreSQLの拡張性すごい!ということで。
明日は DaiMotoh さん、お願いします。
[Python][sphinx]Blockdiag Advent Calander 1日目 href機能
blockdiagアドベントカレンダー、初日です。 今回はblockdiag 1.1.1から入ったhref機能についてご紹介します。
href機能とは、ノードの属性にhrefを指定することで、SVG形式で出力する時そのノードをクリックをしたらhref属性で指定したURLに飛ぶ、という機能です。
例えば、
diag {
A [label="blockdiag", href="http://blockdiag.com"]
B [label="python", href="http://python.org"]
A -> B
}
としておき、SVG形式で生成します。SVGファイルをブラウザで開いてそれぞれのノードをクリックすると、指定したURLに飛びます。
ただし、残念ながらxlink:hrefに対応していないSVGエディタでは飛びませんし、PNG形式では無意味です。
sphinxとの連携
現在sphinxcontribにもこの機能を使うように変更を行っている最中です。反映されると、以下のように書けるようになります。
.. blockdiag::
diagram {
A [label="blockdiag", href="http://blockdiag.com"]
B [label="python", href=":ref:python"]
A -> B
}
ノードBのhrefに注目してください。:ref:pythonと指定してあります。sphinxでは
.. _python:
を章や節の前に(一行開けて)書くとそこに対して :ref:python でリンクを貼れます。これと同じ事がsphinxのblockdiag内でもできます。
また、sphinxと連携した場合、PNG形式の場合でもクリッカブルマップを自動的に設定してクリックできるようになります。
使い道
自動生成を行うと、大きな図が出来てしまうことがあります。そういう場合は分割させたいのですが、関連が分からなくなってしまいます。この様な時にhref機能があると便利です。
今後
今後グループにもこの機能を追加するかもしれません。blockdiagにはグループを別のファイルに分割する機能(-sオプション)がありますので、リンクを自動的にしてくれるならば、大きな図でも見やすくできるかもしれないと考えています。